注意した直後、
息子は「ごめんなさい」と言った。
声のトーン、問題なし。
態度も一応、素直。
ここまでは毎回合格。
問題は、そのあとだ。
数秒後。
「ねえ、あのさ」
……早い。
早すぎる。
今、まだエンディングロールも流れてない。
私はまだ、
さっきの出来事を頭の中で処理しているところだった。
伝えるべきことは伝えた。
判断も間違っていない。
ここに反省はない。
ただ、
出来事として一度受け取って、
整理してから次に進みたいだけだ。
一方、息子。
もう次の話題に突入している。
さっきまで注意されていた人間とは思えない。
通常運転どころか、
ややテンション高めである。
こちらが気持ちを切り替える前に、
話題だけが次々に投げ込まれてくる。
今日の学校の話。
部活であった出来事。
どうでもいいクイズ。
待って。
一回、区切ろう?
今はその時間じゃない。
どうやらこの親子、
感情の処理速度がまったく合っていない。
私は
「確認 → 整理 → 次へ」の三段階。
息子は
「了解 → 次」。
以上。
説明書が違う。
だから私はまだ考えているのに、
息子はもう日常に戻っている。
しかも、
「さっきの話は完全に終了しました」
という顔で。
以前は、
「軽く受け止めすぎじゃない?」
「ちゃんと分かってる?」
と思うこともあった。
でも最近は、
反省していないのではなく、
保存していないだけなのかもしれないと思う。
嫌な空気を長期保存しない。
フォルダも作らない。
バックアップも取らない。
見た瞬間、削除。
この潔さ、
正直ちょっと羨ましい。
もちろん、
こちらの気持ちが追いつかない瞬間はある。
「今、その話じゃない」
「せめて30秒くれ」
と、心の中で何度も言っている。
それでも、
私がまだ頭の中で処理作業をしている横で、
息子がもう通常運転に戻っている姿を見ると、
これはこれで、
この子なりの生き方なのだろうと思えてくる。
私は一拍遅れて日常に戻る。
息子は先に進んでいる。
その時間差に
「早すぎだろ」と小さくツッコミを入れながら、
今日も私は、
男子校男子という生き物を観察している。



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